ミトコンドリア脳筋症!?聞き慣れないミトコンドリアの病気を大解剖!!

健康
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ミトコンドリア脳筋症(ミトコンドリア病)は、ミトコンドリアDNA、あるいは、核DNA上の遺伝子異常から引き起こされる様々な臓器で起こる病気の総称です。治療法が確立されておらず、難病に指定されています。この記事では、ミトコンドリア脳筋症について、代表的な病型から診断の基準、対症的な治療法まで記載させていただきました。

ミトコンドリア脳筋症とは


ミトコンドリア脳筋症という、ちょっと聞きなれない病気について調べてみました。この病気は大変複雑で、この記事ですべてを説明することは難しいですが、なるべく細かく広い範囲で調べましたので、ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。

ミトコンドリアDNAの異常!ミトコンドリア脳筋症基本情報


ミトコンドリア脳筋症は、ミトコンドリア病とも呼ばれる、ミトコンドリアDNA上、あるいは、核DNA上の遺伝子異常によって引きおこされる病気の総称です。

ミトコンドリア脳筋症の歴史

体内の細胞の1つ1つに、数百個のミトコンドリアが入っており、細胞に必要なエネルギーを作り出していますが、ミトコンドリアに異常が生じると細胞の働きが悪くなり、さまざまな症状があらわれるますが、これをミトコンドリア病と言います。

特にエネルギーを多く必要とする脳や筋肉などは症状が出やすいことが知られていて、ミトコンドリア病はミトコンドリア脳症、ミトコンドリア脳筋症と呼ばれることもあるようです。

この病気の原因遺伝子がヒト22番染色体長腕(せんしょくたいちょうわん)のテロメア近傍(きんぼう)の限られた部分に存在することが1998年にHiranoらによって報告されたと言われ、その後この原因遺伝子がチミジン加リン酸分解酵素であるチミジン・ホスホリラーゼをコードする遺伝子TYMPであることが証明されたのだそうです。

ミトコンドリア病は、2009年10月に、国の難病対策の1つである特定疾患治療研究事業の対象に認められましたが、これは一定の条件を満たす病気を対象に、その患者さんの医療費を助成し原因の究明や治療法の開発などに向けた調査研究を推進する制度であるとされます。

ミトコンドリア病であると認定されるためには、認定基準を満たす必要があり、具体的には、主症候(主な症状)として、筋肉、中枢神経、心臓、腎臓(じんぞう)、血液、肝臓(かんぞう)のいずれかに症状があることが要件となっていると指摘されています。

ミトコンドリア脳筋症の患者数

ミトコンドリア脳筋症の患者数は、イギリスやフィンランドの統計では10万人に9〜16人という報告がありますが、ミトコンドリア脳筋症は症状が多彩で、軽い症状の場合に見逃されることもい多くあると予想され、すべての症例で診断がされている状況ではないと言われます。

日本ではまとまった統計が出されていないともされ。またミトコンドリア脳筋症は何をもって発症とするかが決めことが困難でもあるため、もっと多くの人がこの病気の患者である可能性があると推定されているようです。

代表的なミトコンドリアDNA上の遺伝子変異である3243番目の塩基の点変異による患者数の調査がなされていて、10万人に5.7人、軽微な症状の人もいれると236人と推測されているようです。

ミトコンドリア脳筋症の原因

ミトコンドリアの働きを低下させる原因としては、遺伝子の変化に由来する場合と、薬物などが原因でおきる場合があると言われているようです。大部分は遺伝子の変化で起きると考えられています。

しかし、ミトコンドリアの働きに関わるタンパク質は1000を超えると推定されていて、それらの設計図である遺伝子の変化が、すべてミトコンドリア脳筋症の原因となる可能性があるとされています(すでに150種類以上の遺伝子の変化がミトコンドリア病に関係することがわかっているようです)。

これらの遺伝子には、細胞の核と呼ばれるところに存在する核DNA(通常のDNA)に乗っている遺伝子と、ミトコンドリアの中に存在する別のDNA(ミトコンドリアDNAと呼ばれる)に乗っている遺伝子があると言います。

ミトコンドリア病の原因が核DNA上の遺伝子から新しく次々と明らかにされていて、また核DNAに比べると短いミトコンドリアDNA上の遺伝子にも、病気に関係する変化が患者から見つかっていると指摘されています。

ミトコンドリアDNAはミトコンドリアの中に存在しますが、1個のミトコンドリアの中に5〜10個くらい入っています。そのようなミトコンドリアは1細胞に数10から数100個あるので、1細胞でみるとミトコンドリアDNAは数1000個も存在していることになります。

数1000個もあるミトコンドリアDNAのほんの1部が変化しても細胞の働きに影響しないし病気にもならいのが普通ですが、。ミトコンドリアDNAの変化で病気になっている人には、通常は変化したミトコンドリアDNAの割合が高いことが知られていると指摘されています。

ミトコンドリア脳筋症の症状

ミトコンドリアの働きが低下して起きるミトコンドリア脳筋症は、個々の細胞の働きが低下したり、そのような細胞が消滅したりしますが、それがどの細胞にも起きる可能性があり、様々な症状があらわれると言われています。

痙攣(けいれん)、脳卒中、精神症状、発達の遅れなどの脳の症状、物が見えにくい、音が聞こえないなどの感覚器の症状、運動ができない、疲れやすいななどの筋肉の症状などで、特定することが難しいようです。その中でも、比較的エネルギーを多く必要とする神経、筋肉、心臓などの臓器の症状があらわれやすいとされています。

ミトコンドリア脳筋症の症状の特徴は、全年齢に、あらゆる症状が、あらゆる組み合わせであらわれるとも指摘されています。ほぼすべての細胞にミトコンドリアが存在しますが、細胞は同じ種類のものが集まって組織(神経組織、心筋組織など)を作り、それらの組織が血管や結合組織などの他の組織とともに、身体のために効率よくきちんと働くようになっている構造体が臓器です。

これが脳や心臓などになります。そのためミトコンドリア脳筋症では、このような臓器の働きが低下した場合に症状があわられると説明されています。

難病指定されている!ミトコンドリア脳筋症について

ミトコンドリア脳筋症の特徴を見て行きます。またこの病気は、難病に認定されています。その認定基準についても記載しました。

発生しやすい部位

ミトコンドリア脳筋症は、様々な症状が様々な体の部位に起こるとされますが、特に細胞がエネルギーを多く必要とする脳や筋肉などは症状が出やすいことが知られていると指摘されています。

ミトコンドリア病ハンドブック 国立精神・神経医療研究センター病院 遺伝カウンセリング室

専門機関で受診

ミトコンドリア脳筋症の治療法は、大きく2つに分けられると言われます。1つは、あらわれている症状を和らげる対症療法が行われるとされています。対症療法は、症状があわられている各臓器の専門医に診てもらうことが望ましいと言われ、診療科の多い病院を中心として治療を受けることが推奨されています。

もう1つの治療法は、病気の原因であるミトコンドリア機能の低下を改善させる原因療法であると言われます。ミトコンドリアでの代謝に関わる物質やビタミンなどが使用されていますが、現時点では確実に有効性が証明されているものが無いと言います。

ミトコンドリア脳筋症の専門医は現在のところおらず、あまりにいろいろな症状がでるために、その症状に応じていろいろな臓器の専門医(小児科、神経内科、脳外科、耳鼻科、眼科、内分泌科、循環器科、腎臓内科など)がミトコンドリア脳筋症の基本を理解しながら協力して診察する必要があると指摘されています。

遺伝子検査等3つの検査

ミトコンドリア脳筋症の確定診断には、ミトコンドリア機能や構造の変化(異常)を証明する必要があると言います。通常は3種類の検査が行われており、1つは生化学的な検査でエネルギー代謝障害を確認します。もう1つは病理学的な検査で細胞内ミトコンドリアの数や大きさの変化を調べます。

さらに遺伝学的な検査でミトコンドリア関連遺伝子の変異を確認するとされます。それぞれが専門的な技術と経験が必要で、ミトコンドリア脳筋症の診断をよく行っている施設に必要な検査材料を提供して検査をしてもらうことが必要であると言います。

難病法での診断基準

ミトコンドリア脳筋症は、難病医療費助成制度の対象となる疾病の1つとされており、ミトコンドリア脳筋症の患者であると認定されるために、定められた認定基準を満たす必要があると言います。

具体的には、以下の認定基準を満たす必要があるとされます。

1.主症候(主な症状)
1-1.進行性の筋力低下、又は外眼筋麻痺(がいがんきん)を認める。
1-2.知的退行、記銘力障害、痙攣(けいれん)、精神症状、失語・失認(しつにん)・失行(しっこう)、強度視力低下、一過性麻痺(いっかせいまひ)、半盲(はんもう)、皮質盲(ひしつもう)、ミオクローヌス、ジストニア、小脳失調などの中枢神経症状のうち、1つ以上を認める。
1-3.心伝導障害、心筋症などの心症状、糸球体硬化症、腎尿細管(じんにょうさいかん)機能異常などの腎症状、強度の貧血などの血液症状、中等度以上の肝機能低下などの肝症状のうち、1つ以上を認める。

2.検査・画像所見
2-1.安静臥床(あんせいがしょう)時の血清、又は髄液(ずいえき)の乳酸値が繰り返して高い、又はMRスペクトロスコピーで病変部に明らかな乳酸ピークを認める。
2-2.脳CT/MRIにて、梗塞(こうそく)様病変、大脳・小脳萎縮像、大脳基底核、脳幹に両側対称性の病変等を認める。(画像検査所見)
2-3.筋生検、又は症状のある臓器でミトコンドリアの形態異常を認める。(病理検査所見)
2-4.ミトコンドリア関連酵素の欠損、又はコエンザイムQ10などの中間代謝物の欠乏を認める。(生化学検査所見)
2-5.ミトコンドリアDNAの質的、量的異常、またはミトコンドリア関連核遺伝子変異を認める。(遺伝子検査所見)

1-1から1-3のうち1項目以上かつ2-1から2-5のうち2項目以上を満たす時、「確実」とされ、1-1から1-3のうち1項目以上かつ2-2から2-5のうち1項目以上を満たす時、「疑い」があるとされます。

難病医療費助成制度の対象となる疾病一覧

ミトコンドリア病ハンドブック 国立精神・神経医療研究センター病院 遺伝カウンセリング室

難病指定の特定疾患

ミトコンドリア脳筋症は、難病医療費助成制度の対象疾病(たいしょうしっぺい:指定難病とも言う)です。上記の診断基準によってミトコンドリア病と診断されたとき、ミトコンドリア脳筋症と診断されます。

予後の死亡率と寿命

ミトコンドリア脳筋症は体内の様々な細胞で起こり、血液のように古い細胞はどんどん消滅して新しい細胞に置き換わる場合や、脳の神経細胞のように少しずつ消滅して行き新しいものに置き換わることがない場合もあると言われます。

このような細胞毎の特徴から、神経症状のように徐々に症状が重くなる場合も、逆にある乳児期にみられる貧血(ピアソン病)などのように徐々に軽くなる場合もあるようです。

ミトコンドリア病の死亡率は90%未満で。CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺症候群)で心ブロックが認められる場合では死亡が20%で、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)、赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)は30~40歳代で死亡するものが多いと説明されています。

ミトコンドリア脳筋症の治療

ミトコンドリア脳筋症の治療は、対症療法と原因療法の2つがあるとされます。対症療法は基本的に各臓器症状に応じて行われる必要があり、患者の全身状態を改善させるためにきわめて重要で、例えば糖尿病を合併した場合は、血糖降下剤やインシュリンの投与が必要と言います。

また、てんかんを合併した場合には、抗てんかん剤の投与が必要になり、心伝導(しんでんどう)障害に対してはペースメーカー移植、難聴に対しては補聴器の使用、極度の下痢や便秘、貧血や汎血球減少症(Pearson 症候群)などに対しても対症療法が重要であると指摘され、各臓器症状への対症療法は、それぞれの専門医が連携して治療する必要があるとされます。

原因療法は、ミトコンドリア内の代謝経路で各種のビタミンが補酵素として働いていることに注目して、それを補充する治療法で、実際には、水溶性ビタミン類(ナイアシン、B1、B2、リポ酸など)が用いられるようです。コエンザイムQ10の効果は明らかにされていないものの使用することが多いと言います。

またMELAS(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群)の卒中様症状の軽減と予防を目的にL-アルギニンの臨床試験が行われたものの、その結果は公表されていないようで、ミトコンドリア病の治療薬として薬効を科学的に証明する臨床試験に至った薬剤は日本ではアルギニンが最初で、今後もこのような臨床試験を進めて行くことが肝要との指摘があります。

将来予測は極めて難しい!ミトコンドリア脳筋症の予後は


ミトコンドリア脳筋症の将来予測は困難であるとされますが、この病気ではリハビリで症状を緩和したり、日常生活での注意点で症状の悪化を食い止めてゆくことが重要であるとされます。

ミトコンドリア脳筋症の経過

ミトコンドリア脳筋症の臨床経過も、急性に現れる場合、ゆっくり症状が現れる場合、ゆっくり改善する場合、ほとんど変わらない場合などあらゆる経過がありうることになり、ミトコンドリア脳筋症の将来予測はたいへん難しいという現状があると指摘されています。

症例に合ったリハビリ

ミトコンドリア脳筋症では、特に細胞がエネルギーを多く必要とする筋肉に症状が出やすいとされますが、その緩和のためリハビリなどで運動負荷をかけるときは長い時間頑張りすぎず、20分とか30分ごとに5分とか10分休みを入れながら運動をしたほうがいいようです。

それはミトコンドリア脳筋症で、ミトコンドリアを介する好気的エネルギー代謝(有酸素運動時に必要とされる)が障害を受けるためと考えされています。また有酸素運動は軽い運動を15分以上続けると発生します。実際、ミトコンドリア脳筋症では瞬間的な筋力は比較的保たれているのに、続けて運動すると疲れやすいといった症例があると指摘されています。

よって、リハビリなど運動負荷がかかるときは長い時間頑張りすぎないようにする一方で、ミトコンドリアに負荷がかかることを恐れて、運動を強く制限したりリハビリを制限すると筋力が逆に低下してしまう可能性があると言います。

ミトコンドリア脳筋症の場合に運動制限をするより軽度の運動負荷をかけたほうが筋力がよくなるといおう報告がありますので、可能な範囲でリハビリや軽度の運動負荷を行うことが重要であると言います。

日常生活での注意点

ミトコンドリアに負担がかからないようにするために、生活リズムを整え、睡眠を十分に取ること、栄養のバランスの良い、ビタミンを多く摂る食事にすることが大事であると言います。

ミトコンドリアに悪い影響を与えると考えられる、飲酒、過食や飢餓(きが)は避けるようにして、感染を契機に症状が悪化する場合があるため、同居の家族を含め風邪をひかないようにすること、インフルエンザなどの予防接種も重要であると指摘されます。

ミトコンドリア脳筋症に特徴的である3大病型

ミトコンドリア脳筋症の3大病型としては、慢性進行性外眼麻痺症候群(CPEO:まんせいしんこうせいがいがんまひしょうこうぐん)、赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)の3つであるとされます。

慢性進行性外眼麻痺症候群

慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CPEO)の主な症状は、目の周りの筋肉が麻痺(まひ)して眼球を動かせなくなることです。これに網膜(もうまく)の変性と心臓の伝導障害を合併する場合、Kearns-Sayre症候群(KSS)と呼ばれると言います。骨格筋、膵臓(すいぞう)、腎臓(じんぞう)、消化管などの臓器に症状が現れることもあるようです。

遺伝子検査では、多くの場合、ミトコンドリアDNAの変異が認められ、変異の種類によって、由来や次世代への遺伝の仕方が異なりるとされています。具体的には、ミトコンドリアDNA単一欠失のときは突然変異または母系遺伝(まれ)、ミトコンドリアDNA点変異のときは母系遺伝または突然変異(まれ)であると指摘されます。

他に、ミトコンドリアDNA重複のときは突然変異または母系遺伝、ミトコンドリアDNA多重欠失(核DNA異常)のときは突然変異またはメンデル遺伝を、遺伝子検査で認めると言われます。発症時期は小児から成人までとされます。生化学検査では血中乳酸値が軽度に上昇するようです。

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MERRF(マーフ)

ミオクローヌスを伴うミトコンドリア病(MERRF)の症状は、主に脳と筋肉にあらわれるとされ、体がふらついたり(小脳症状)、自分の意思とは関係なく筋肉が動いたりするといいます(ミオクローヌス)。まれに脳卒中のような症状がおこることもあるようです。

多くの場合、ミトコンドリアDNAの点変異が見つかるため、通常は母系遺伝すると考えられますが、中には当てはまらない場合もあると言います。具体的には遺伝子検査において、ミトコンドリアDNA点変異を母系遺伝、またはまれに突然変異で認め、核DNA異常が疑われる場合がメンデル遺伝で起こると言われます。

発症時期は小児から成人までとされます。生化学検査では血中乳酸値が中から高度に上昇するようです。

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MELAS(メラス)

卒中様症状を伴うミトコンドリア病(MELAS)には、急激な意識障害や運動麻痺など脳卒中に似た症状があらわれるという特徴があり、心臓や膵臓(すいぞう)、耳、内分泌器官などの臓器に症状がおこる場合もあると言われます。

症状の種類や程度はケースごとに異なり、一人の患者でも時間とともに変化することがあるようです。多くの患者で、ミトコンドリアDNAの点変異が見つかるため、通常は母系遺伝すると考えられますが、中には当てはまらない人もいます。具体的には遺伝子検査において、ミトコンドリアDNA点変異を母系遺伝、またはまれに突然変異で認め、核DNA異常が疑われる場合がメンデル遺伝で起こるそうです。

発症時期は小児から成人までとされます。生化学検査では、髄液(ずいえき)・血中乳酸値が中~高度に上昇し、電子伝達系酵素複合体活性(I、IV、複数)が低下し、さらにMRIなど画像検査で異常所見を認めると指摘されています。

ミトコンドリア病ハンドブック 国立精神・神経医療研究センター病院 遺伝カウンセリング室

新生児から成人まで多種多彩な症状!ミトコンドリア脳筋症の他の種類

その他、ミトコンドリアDNA上、核DNA上の遺伝子異常によって引き起こされると思われる病態は、多くありますが、代表的な病態を記載します。

リー脳症

リー(Leigh)脳症では、脳と筋肉に主な症状があらわれて、通常は乳幼児期に発症し、精神運動発達遅滞、痙攣(けいれん)、筋緊張や筋力の低下といった症状があらわれると言います。ただし発症時期や進行の度合いはケースにおより様々であるとされます。

遺伝子変異は、ミトコンドリアDNAの場合と核DNAの場合があり、遺伝子によって由来や次世代への遺伝の仕方が異なるとされ、具遺体的には遺伝子検査にて、ミトコンドリアDNA点変異が母系遺伝、または突然変異(まれ)によって起こり、核DNA異常がメンデル遺伝で起こると言われます。

発症時期は乳幼児から小児までとされます。生化学検査では、髄液(ずいえき)・血中乳酸値が高度に上昇し、電子伝達系酵素複合体活性(I、II、IV、V、複数)が低下し、ATP合成が低下します。さらにMRIなど画像検査で異常所見を認めると指摘されています。

ミトコンドリア異常起因の心筋症

ミトコンドリア心筋症はミトコンドリアDNAの異常による、ミトコンドリア病で最も特徴的なものの1つであり、ミトコンドリアDNAの変異よって様々な疾患(しっかん)があると言います。特に、ミトコンドリア病で心合併症を起こすものが、KSS、MERRF、MELASなどと言われます。

ミトコンドリア異常を伴う心筋症は、広義に核遺伝子およびミトコンドリアDNAの変異による疾患であるが、狭義のミトコンドリア心筋症は、ミトコンドリアDNA変異に基づく疾患と定義されていると指摘されています。

心臓は絶え間なく血液を送り出すポンプとして機能を維持するために常に大量のエネルギーを必要とするが、このエネルギーの大部分は心筋内に多数存在するミトコンドリア内で産生されたATPに依存しているので、ミトコンドリア異常は心筋組織へのエネルギー供給に障害をきたし、心機能障害を生じる原因とるのではないかと考えされているようです。

レーバー病

レーバー病は、主に10~30歳くらいで両眼性の視力低下で発症し、徐々に視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)の蒼白化(そうはくか)が始まり、通常1年程度で視神経萎縮(ししんけいいしゅく)に至る疾患で、80%程度が男性に発症すると言われます。

典型的な視力障害とともに、多発性硬化症様の症状を合併したり、ジストニア、振戦(しんせん:筋肉の収縮とゆるみを不規則に繰り返す)、片麻痺(かたまひ)、てんかんなどの症状があわらわる場合があり、心症状として、WPW症候群やLGL症候群が約10%であらわれるとされています。

ミトコンドリアDNAの11778変異が日本人では、11778変異が90%を占めるとされていて、14459変異があらわれると視神経萎縮とジストニアを合併するのが特徴であると指摘されています。

ミトコンドリア糖尿病

ミトコンドリア糖尿病は診断後短期間でインスリン治療となることが多く、糖尿病細小血管病変の進行が早く、心筋症やMELASの合併もあるため早期に診断を確定し適切な対応をとる必要があると言われる病態です。(1)糖尿病、(2)母系遺伝、(3)難聴、(4)ミトコンドリア遺伝子の異常が認められた場合には、ミトコンドリア糖尿病の診断となると言われます。

日本人のミトコンドリア糖尿病の特徴としては、(1)日本人糖尿病患者の約1%に認める、(2)糖尿病発症年齢は30代前半(32.8±12.4歳)、(3)60%に母系遺伝を認める、(4)1型(37.4%)、SP type1DM(12.2%)、2 型(50.4%)と様々な病型をとる、(5)低身長が多く肥満は少ない(BMI 18.6±2.8kg/m2、などが報告されている言います。

さらに(6)糖尿病診断からインスリン治療まで平均3年で移行、(7)抗GAD抗体は陰性、(8)感音性難聴(かんんおんせいなんちょう)を高頻度に合併する、(9)心筋症、脳筋症、網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)を合併することがある、(10)糖尿病慢性合併症が進行しやすい(特に末梢神経障害)との報告があると指摘されています。

Pearson病

Pearson病は、1979年にPearson(ピアソン)らが乳児期に発症する鉄芽球性貧血(てつがきゅうひんけつ)と膵外分泌不全(すいがいぶんぴふぜん)を主症状とする症候群として発表したとされています。

多くは貧血に引き続いて汎血球減少症(はんけっきゅうげんしょうしょう)となり、その他多臓器の症状があらわれて、時に命に関われ宇重篤な症状を引き起こします。1988年にこの症候群の患者の血球細胞に、ミトコンドリアDNAで単一欠失があることが証明されたと言います。

チトクロームc酸化酵素欠損

ミトコンドリア病には酵素欠損(こうそけっそん:特定酵素の遺伝子の突然変異により酵素の活性が著しく低下する、活性のない酵素が生産される、酵素タンパク質が生産されないといった状態)があわられることがあると言います。

生化学的な分類で、この状態に対しての診断名があり、その中で最も多いのがチトクロームc酸化酵素(COX)(複合体IV)欠損であると言われていて、この酵素欠損でリー脳症にもなります。リー脳症以外の疾患としては、乳児重症型、乳児重症型があると指摘されています。

メンギー

メンギーは、常染色体劣性伝形式(じょうせんしょくたいれっせいでんけいしき)をとるまれな疾患で、通常10~20歳代で発症すると言います。最も目立つ症状は、著明な全身のやせと消化器症状(消化管運動不全や下痢)で、他に、眼瞼下垂(がんけんかすい)、末梢神経障害による手足のしびれなどが見られるとされます。

筋生検では赤色ぼろ線維、チトクロームc酸化酵素部分欠損など、何らかのミトコンドリア異常の所見が見られるとされ、骨格筋のミトコンドリアDNAを調べると、ミトコンドリアDNAの欠乏(量の減少)や多重欠失と呼ばれる変異が検出できると指摘されています。

ミトコンドリア脳筋症では、治療には多くの医療・福祉制度を活用できます!


最後までお読みいただきありがとうございました。このようにミトコンドリア脳筋症は、治療法が確立しておらず、対症療法が中心であって患者さんのご苦労は計り知れませんが、調べてみると難病に認定されていることから、多くの医療・福祉制度が活用できるようですので、これら制度の活用をして、治療や日常生活の質の向上に役立ていただきたいと感じました。

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