はしか(麻疹)は感染力が非常に強い感染症!ワクチンで予防を!合併症にも要注意

病気
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はしか(麻疹)は麻疹ウイルスへの感染で引き起こされる感染症です。

感染力は非常に強く、また免疫抗体を持たない人が感染すればほぼ確実に発症するとされています。

重症化したり合併症を引き起こすことがあり、現在も致死率は1000人に1人と高く、世界的にも警戒されている感染症です。

麻疹について、症状や好発年齢、予防法などを解説します。

はしかとは

はしかは医学的には「麻疹(ましん)」と呼ばれるもので、麻疹ウイルスに感染することによって引き起こされる感染症です。

ヒトからヒトへ感染し、伝染力は非常に強いとされています。一度感染して発症すると一生免疫が持続するといわれていますが、免疫のない人が感染するとほぼ100%発症に至ります。

麻疹は10~12日間の潜伏期を経た後発病し、病期は「カタル期」「発疹期」「回復期」にわけられます。

発熱、咳嗽、鼻汁などの風邪症状からはじまり(カタル期)、3日程度経つと一旦熱は下がりますが、発疹が出始めるとともに再び高熱が出ます(発疹期)。

発疹が出始めて3~4日程度で解熱し、発疹は黒ずんだ色へと変わっていきます(回復期)。

昔は麻疹にかかると生命の危機であると言われるほど致死率の高い病気でした。

子どもは3歳頃まで無事に育ってから出生届を出すといったことがあったようですが、それは病気によって命を落とす子どもが少なくなかったからであり、その病気のひとつには麻疹がありました。

50年前では、年間の麻疹による死亡者数は数千人にものぼったとされています。

現在の日本ではワクチンが普及したことによって患者数は激減していますが、それでも感染し発病した場合には、重症度の高い病気といえます。

麻疹に対する特効薬はなく、現代の医療をもってしても1000人に1人は亡くなるとされています。

はしかってなあに? | 麻疹 はしか | 沖縄県はしかゼロプロジェクト

麻しん(はしか)に関するQ&A|厚生労働省

国立感染症研究所 感染症情報センター

かかりやすい年齢

1番は1歳代

麻疹の患者数を年齢別に比較すると、1歳代が最多となっています。

母体から受け継いだ免疫が消え、かつワクチンを接種し免疫抗体を得る前に感染したケースが多いためと思われます。

麻疹の予防にはワクチンの接種が最も有効ですが、このワクチンは予防接種法により生後12~24カ月が接種推奨時期と定められています。

しかし麻疹の患者数が最も多いのは1歳代であることからわかるように、24カ月に接種していたのでは遅いともいえます。

そのため国立感染症研究所では、日本における流行状況を考慮すると生後12~15カ月を推奨するとしています。

国立感染症研究所 感染症情報センター

1.麻疹について 1)感染症発生動向調査に基づく我が国の麻疹患者数 2.麻しんワクチンについて 2)麻しんワクチン接種方法・時期

次に生後6カ月~11カ月の赤ちゃん

1歳代に次いで、生後6~11カ月で麻疹患者数が多いとされています。

乳児は母体から受け継いだ移行免疫を持っており、母体が麻疹ウイルスに対する免疫抗体を持っていれば赤ちゃんにも移行します。

移行免疫は生後6カ月頃まで持続するといわれているため、生後6カ月以降はあらゆるウイルスや菌に対して無防備な状態になるといえます。

生後6カ月~11カ月での患者数が多いのは母体由来の麻疹免疫がなくなったためであり、かつワクチンの接種前であることが理由として挙げられます。

この定期接種の期間前である時期を麻疹感染からどう守るかは大きな課題となっています。

1歳未満で麻疹にかかると重症化する確率が高いため、定期接種の時期を生後9カ月前後からとしている国々もあります。

しかしこの年齢におけるワクチンの効果や安全性については十分に評価されていないため、乳児へのワクチン接種の導入は慎重を期すべきであるとされています。

国立感染症研究所 感染症情報センター

1.麻疹について 1)感染症発生動向調査に基づく我が国の麻疹患者数 4.最新(現在)の知見 4) 乳児期(生後12か月未満)の麻しんワクチン接種

大崎市医師会ホームページ

小児の免疫

3番目に2歳代

3番目に2歳代が多くなっています。麻疹患者数は2歳以下で半数近くを占めており、死亡者数をみると0~4歳児の死亡が大半を占め、特に0~1歳児の占める割合が多くなっています。

国立感染症研究所 感染症情報センター

抗体を持っていない大人も注意

成人では20~24歳群の患者数が最も多く、次いで10代後半、25~29歳群の順番です。

平成19年~20年に、10代から20代の人を中心に麻疹が流行しました。

これは、10代から20代の年代の人たちの中には、これまで1度も麻疹の予防接種を受けていない人がいるためです。

加えて、1度の予防接種では十分な免疫が獲得できるとは限らないため、1度きりの接種では数%の人に十分な免疫がつかないことが知られています。

そのような人たちを中心に、感染が広まったものと考えられます。

ワクチンが普及するにしたがって麻疹患者の数は減り、麻疹ウイルスにさらされる機会が減りました。

そのため、幼少時に予防接種を1度だけ接種したした人はそれ以降免疫が強化される機会がなく、時間の経過とともに麻疹ウイルスに対する免疫力が弱まってきていることも一因として考えられます。

大人が麻疹にかかると、重症となる可能性が高まります。ご自身に免疫があるか、今一度確認しておきましょう。

麻しん(はしか)に関するQ&A|厚生労働省

国立感染症研究所 感染症情報センター

はしかの抗体検査

血液検査

麻疹に対する抗体免疫があるか否かは、血液検査によって麻疹抗体価を調べればわかります。

麻疹抗体価を調べる検査の種類は、赤血球凝集抑制反応(HI)、酵素免疫測定法 (EIA-IgG)、中和反応(NT)、粒子凝集反応(PA)などです。

■赤血球凝集抑制反応(HI)
赤血球凝集能をもつウイルスの抗体が血清中にある場合、凝集反応が抑制されることを応用した検査方法です。安価ですが、感度がやや悪いため偽陰性(本来は陽性であるのに検査結果が陰性となる)となってしまうことがあります。

陰性(-):8倍未満
十分な免疫なし(±)~(+):8倍、16倍
十分な免疫あり(+):32倍以上

■酵素免疫測定法 (EIA-IgG)
抗原抗体反応を利用した検査方法です。感度は良いですが、費用は他の方法と比較して高価になります。

陰性(-):2.0未満
十分な免疫なし(±)~(+):2.0~
十分な免疫あり(+):8.0(16.0)以上

■中和反応(NT)
抗体をウイルスに作用させたものを培養細胞に添加し、病原性を中和できたか調べる方法です。

安価で信頼性に高い検査ですが、他の検査に比べて結果が出るまで時間を要します。

陰性(-):4倍未満
十分な免疫なし(±)~(+):4倍
十分な免疫あり(+):8倍以上

■粒子凝集反応(PA)
ゼラチンに病原体の抗原を結合させたものを、血清と反応させる方法です。血清中に抗体があれば、凝集反応が起きます。感度は良いですが、現在のところ保険適応外です。将来はNT方の代替検査として注目されています。

ワクチン接種が必要:64倍以下

ワクチン接種の基準となるウイルス抗体価を教えてください。

かかる費用

抗体価検査のみが目的であれば保険が使えないため、自費となります。

抗体検査の種類によってかかる費用は異なります。

例えば赤血球凝集抑制反応(HI法)であれば実施料は79点(1点は10円)ですが、酵素免疫測定法 (EIA-IgG法)であれば実施料は223点 です。

実施している検査方法は各病院によって異なりますから、検査方法を指定することはできません。

これに免疫学的検査判断料144点が加わり、採血料や初診料もかかります。

何らかの証明書が必要であれば文書料も数千円かかりますから、合計で1万円ほどか、病院によってはそれ以上かかるかもしれません。

臨床検査事業|ファルコバイオシステムズ 臨床検査事業

検索ワード:「麻疹ウイルス抗体」

結果が出るまでの期間

■赤血球凝集抑制反応(HI)
約3日

■酵素免疫測定法 (EIA-IgG)
約3日

■中和反応(NT)
約10~14日間

麻疹の抗体検査について ウィメンズクリニック大泉学園

感染経路

麻疹ウイルスは非常に感染力の強いウイルスです。飛沫感染、空気感染、接触感染などあらゆる感染経路によって感染します。麻疹に対する免疫がない集団に1人の発症者がいたとした場合、12~14人に感染するとされています。毎年冬季に流行をみせるインフルエンザウイルスでは1~2人ですから、その感染力の強さは脅威です。

麻しん Q&A Q1-[1]:麻疹はどのように感染しますか?を参照

飛沫感染

麻疹の主な感染経路は麻疹ウイルスに感染している人の咳やくしゃみによって麻疹ウイルスが飛散され、それを吸い込むことによって感染する飛沫感染です。

麻疹ウイルスに対する免疫を持っていない人が暴露を受けると、90%以上が感染するとされています。

はしか・風疹 症状・疾患ナビ | タケダ健康サイト ウイルス感染の項を参照

measles-白十字小児科医院を参照

空気感染

麻疹ウイルスは感染力が非常に強いため、感染した人と話したり接触したりしなくても、空気中に浮遊しているウイルスを吸い込んだだけで感染することもあります。

はしか・風疹 症状・疾患ナビ | タケダ健康サイト ウイルス感染の項を参照

接触感染

麻疹ウイルスの感染者が咳やくしゃみを受け止めた手や、鼻汁にも麻疹ウイルスが含まれるため、それらに触れることによって感染する接触感染も起こり得ます。

はしか・風疹 症状・疾患ナビ | タケダ健康サイト ウイルス感染の項を参照

症状の現れ方

麻疹の「潜伏期」は10~12日程度です。

潜伏期の後に症状が現れ始め、これを「カタル期」といいます。

「カタル期」を経て「発疹期」に入り、やがて「回復期」へと移行します。

カタル期

前駆期ともいいます。

38度前後の発熱と同時に、咳嗽や鼻汁などの風邪症状がみられます。目の充血や目やに、光を眩しく感じるといった結膜炎症状も生じます。

口腔内の粘膜の発赤などが目立つようになり、やがて口腔内粘膜にはコプリック斑と呼ばれる白いブツブツがみられるようになります。

コプリック斑は麻疹に特徴的な症状ですが、発疹の出現から2日を過ぎる頃までには消失してしまいます。

早くから現れる鼻汁、咳嗽、目やになどはカタル症状と呼ばれ、カタル期、発疹期、回復期にわたって持続してみられます。

カタル期は3~4日程度続きます。この時期はまだ発疹などの麻疹特有の症状がないため麻疹と気づいてない場合が多いですが、感染力が最も強い時期でもあり、周囲へ感染させる危険性が最も高い時期です。

はしかってなあに? | 麻疹 はしか | 沖縄県はしかゼロプロジェクト

麻疹(はしか)とはー特徴的な症状と予防接種の重要性|メディカルノート 2. 前駆期(3~4日)を参照

麻しん Q&A Q1-[1]:麻疹はどのように感染しますか? Q1-[2]:麻疹にはどのような症状がありますか?を参照 

発疹期

発病から3~4日すると一旦解熱傾向を示しますが(1℃程度)、その後半日くらいのうちに再びこれまで以上の高熱が出て、40度を超えることもあります。この時期が最もつらい時期となります。

この頃より、赤くかゆみを伴う発疹がみられ始めます。

発疹は耳の後ろ、頚部、額の辺りから始まることが多く、翌日には顔面、体幹部、上腕に広がり、更に翌日には四肢末端にまで及びます。

発疹が全身に広がるまで、39℃以上の高熱が続きます。

はじめは扁平な発疹ですが、やがて皮膚面より隆起したものとなります。

発疹のひとつひとつは小さいものですが、やがて発疹同士が融合して不整形斑状(斑丘疹)となるのも、麻疹による発疹の特徴の一つです。

はしかってなあに? | 麻疹 はしか | 沖縄県はしかゼロプロジェクト

麻疹(はしか)とはー特徴的な症状と予防接種の重要性|メディカルノート 「はしかの症状」を参照

麻しん Q&A 「Q1-[2]:麻疹にはどのような症状がありますか?」を参照 

回復期

合併症を起こさなければ、発疹が出始めて3~4日経過すると熱は下がり、発疹は次第に黒ずんだ色へと消退していきます。

麻疹の発疹は色素沈着を残し、しばらく残ります。

熱が下がっても2日間ほどは周囲に感染させる可能性があります。

そのため学校保健安全法では第二種学校感染症に指定されており、「解熱後3日を経過するまでの出席停止」と定められています。

欠席しても、期間中は欠席扱いにはなりません。

合併症を引き起こさない限り、7~10日程度で主症状は回復します。

しかし回復後も免疫力の低下が続くため、しばらくは他の病原菌による感染症に注意が必要です。

体力の回復には1カ月ほど要することもあります。

はしかってなあに? | 麻疹 はしか | 沖縄県はしかゼロプロジェクト「症状」を参照

麻しん Q&A 「Q1-[2]:麻疹にはどのような症状がありますか?」を参照 

はしかの診断

コプリック斑の確認

コプリック斑はカタル期の後半から発疹期の前半にかけてみられるもので、口腔内の頬粘膜に赤みを伴った白い斑点のことをいいます。

麻疹を発症するとコプリック斑の出現率は高く、コプリック斑が認められれば診断の決め手となります。

コプリック斑は2日程度で消失してしまうため、受診が遅れた場合は既にみられないこともあります。

臨床症状より麻疹が疑われた場合、麻疹の確定診断に必要な各検査が実施されます。

麻疹A. カタル期(3~4日)を参照

IgM抗体の証明

血液を採取し、酵素免疫測定法 (EIA-IgG)によって、麻疹に特異的なIgM抗体価を調べる検査が行われます。

EIA法は発疹の出現より4~28日後に行う必要があります。

■麻疹は否定的
IgM<1.21

■麻疹ではない可能性が高い
1.21≦IgM<5.0

■麻疹ではない可能性あり
5.0≦IgM<8.0

■麻疹の可能性が高い
IgM≧8.0

国立感染症研究所麻疹対策技術支援チーム「最近の知見に基づく麻疹の検査診断の考え方」を参照

RT-PCR法による検査

RT-PCRは遺伝子検出法検査のひとつです。

咽頭拭い液や、血液(末梢血リンパ球)、尿などを採取し、ウイルスゲノムが検出されるかどうかをみる検査です。

発症前の2~3日前から、発疹出現後の1週間程度まで検出されます。

検査結果が出るまでの所要日数は7~11日程度です。

病原体検出マニュアル麻疹「2.麻疹の検査材料、採取時期」を参照

麻疹ウイルスRNA「検査方法: RT-PCR」を参照

主な治療法

対症療法を行う

麻疹には特効薬がなくこれといった治療法がないため、対症療法が中心となります。

対症療法とは疾患の原因そのものを治療するのではなく、各症状を緩和させるための治療です。

発熱にはクーリング、脱水防止には水分摂取や補液治療などがそれにあたります。

麻疹の場合は細菌の二次感染により肺炎や中耳炎を合併することがあるため、それらの細菌性疾患には原因療法として抗生剤が使用されることがあります。

麻疹にかかったときは、まずは安静にして身体を休めましょう。

発熱がみられる間は十分に水分を摂取し、栄養を補給するようにします。

熱が高くてつらい場合は、解熱剤が処方されます。

咳や痰の症状に合わせ、鎮咳薬や去痰剤が処方されることもあります。

水分を摂取できない場合、点滴治療による補液が必要となることもあります。

症状が重い場合や合併症を起こした場合は、入院治療が必要となります。

麻疹とは「治療・予防」を参照

ワンポイントアドバイス 大流行!麻疹(はしか)への対処「はしかの治療法」を参照

細菌感染を防ぐ

麻疹にかかっている間は身体の抵抗力が落ちているため、細菌による二次感染を引き起こしやすい状態になります。

主な細菌感染症として、肺炎や中耳炎などがあります。脳炎を生じることもあるので注意が必要です。抵抗力をできるだけ低下させないように、安静に努めて体力を保持し、十分に栄養を摂取するようにしましょう。麻疹が治ったあともしばらくは免疫力が落ちていますので、外出などは避けるようにしましょう。

ワンポイントアドバイス 大流行!麻疹(はしか)への対処「はしかの合併症」を参照

間質性肺炎を防ぐ

細菌による二次感染で生じる肺炎ではなく、麻疹ウイルスそのものが肺炎を起こすことがあります。

間質性肺炎といって、重篤な肺炎となる危険性が高いものです。

肺全体が炎症を起こし、胸部レントゲンで真っ白に映ることもあります。体力の低い乳幼児や、もともと気管や肺が弱い小児などは呼吸困難をきたし、死に至ることもある恐ろしい合併症です。

呼吸器症状がひどかったりなかなかよくならない場合などは、早めに医療機関を受診しましょう。

まなこどもクリニック「合併症」を参照

DICを防ぐ

麻疹には通常の経過とは異なり、異常な経過をとるものがあります。

重症出血性麻疹(Severe hemorrhagic measles, black measles)はそのうちのひとつで、突然の発熱、痙攣、昏迷を発症し、昏睡状態に陥ります。

重度の呼吸不全と、皮膚や粘膜に出血疹が認められるようになります。ときにDIC(出血傾向)を合併し、口腔、鼻腔、腸管などからの出血をきたし、死に至ります。

IDSC 感染症情報センター<重症出血性麻疹(Severe hemorrhagic measles, black measles)>を参照

主な合併症

軽いものから重篤なものまで全ての合併症を含めると、全体の30%程度に合併症がみられるとされています。麻疹自体は自然に治癒する疾患です。しかし麻疹は合併症により入院を余儀なくされることもあり、また合併症によって命を落とすこともある恐ろしい病気です。

はしかってなあに? | 麻疹 はしか | 沖縄県はしかゼロプロジェクト「合併症」を参照

下痢

5~8人/100人の頻度で、下痢がみられます。特に乳幼児では下痢や腹痛などの消化器症状が伴うことが多いとされています。

肺炎

4~7人/100人と、肺炎もまた高頻度に起こる合併症です。

麻疹の肺炎には、「ウイルス性肺炎」「細菌性肺炎」「巨細胞性肺炎」の3種類があります。

■ウイルス性肺炎
麻疹ウイルスの増殖に伴う肺炎です。病期の初期にみられることが多いとされています。

■細菌性肺炎
麻疹ウイルスに感染している間は体の免疫力が低下するため、細菌にも感染しやすい状態となります。

肺炎を引き起こす細菌の種類は、肺炎球菌、インフルエンザ菌、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌などです。

普段であれば抵抗力の働きで害を生じない病原菌であっても、重篤な肺炎を起こす原因菌となることがあります。

細菌の二次感染による肺炎では、抗生剤が有用です。

■巨細胞性肺炎
主に細胞性免疫不全の状態にあるときにみられる肺炎です。

肺で麻疹ウイルスが持続感染したことによって生じる肺炎であり、予後は不良で致死率も高い合併症です。

発疹は出現しないケースが多くみられます。麻疹抗体が産生されにくいのも特徴で、長期間にわたってウイルスが排泄され続けます。

中耳炎

頻度は5~15人/100人と高頻度に起こる合併症です。

体の抵抗力が落ちることによって、細菌の二次感染を引き起こすことで生じます。

耳の痛みが主症状ですが、乳幼児では症状を訴えることができないため、中耳からの膿性耳漏で初めて発見されることがあり、発見が遅れることもあるため注意が必要です。

不機嫌な状態が続いたり、耳を気にしたりなどの素振りがないか注意してみておきましょう。

心筋炎や心外膜炎を合併することがあります。

麻疹の経過中の半数以上に心電図異常がみられるとされていますが、ほとんどは一過性のものであり、重篤な状態に繋がることは稀であるとされています。

脳炎

1000人に0.5~1人の割合でみられます。

脳炎を合併すると、発疹が現れて2日~1週間後に、頭痛や痙攣、昏睡などの症状が現れます。

1週間程度の短期間で回復することもあれば、症状が長引いて脳の障害を残したり、ときには死に至ることもあります。

脳炎を合併した60%は完全に回復しますが、20~40%に中枢神経系の後遺症(精神発達遅延、痙攣、行動異常、麻痺など)を残すとされています。

致死率は約15%と、決して低くはありません。

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)

亜急性硬化性全脳炎は英語でsubacute sclerosing panencephalitisといい、その頭文字をとってSSPEとも呼ばれています。

中枢神経に生じるもので、麻疹の合併症の中で最も恐れるべき合併症です。

麻疹にかかった後麻疹ウイルスによる脳炎がゆっくりと進行し、7~10年の潜伏期間を経て発症するといわれています。

亜急性硬化性全脳炎になると、平均して6~9カ月で死に至るとされ、有効な治療法がない大変重篤な合併症です。

麻疹ウイルスの脳内における持続感染が原因で生じるもので、脳内に潜伏している間に麻疹ウイルスが変化し、通常の麻疹ウイルスとはやや異なった性質をもつようになることがわかっています。

そのため、麻疹ウイルスとは区別してSSPEウイルスと呼ばれています。

学業の成績の低下、記憶力の低下、行動異常、感情不安定、体のビクつき、歩行障害、字が下手になるといったことがきっかけで気づくことが多いとされています。

症状の経過は4つのステージにわけられ、これらの症状の出始めが第1期です。

第2期ではこれらの症状がさらに強くなり、体がびくっとなる不随意運動(ミオクローヌス)などの錐体・錐体外路症状が周期的にみられるようになります。

第3期になると症状は更に進行し、歩行できなくなり、食事をとることもできなくなります。

発熱、発汗異常などの自律神経の症状が現れ始めます。第4期では意識が消失し、全身の筋肉の緊張が強くなり、自発運動も消失します。

頻度は、麻疹にかかった患者の10万例に1人の割合で発生します。

ワクチン接種によっても生じる危険性があるとされていましたが、その報告は麻疹が流行していた時期のデータによるものであるため、ワクチン接種との因果関係は証明されていません。

現在の日本では年間1~4人の発症例があり、患者数は150人程度とされています。

ステロイドホルモンや免疫抑制剤、抗がん剤などを投与することにより免疫機能が低下している状態で麻疹にかかった場合の発症が多いとされています。

好発年齢は学童期で、全体の患者数の8割を占めています。

通常の麻疹ウイルスとは異なり、ヒトからヒトへ感染することはありません。

はしかはワクチン接種で予防

麻疹は感染力が強いため、手洗いやマスクのみでは予防することはできません。

麻疹の予防には、ワクチン接種が最も有効です。

麻疹ワクチンが普及したことにより、麻疹の患者数は99%減少したといわれています。

麻疹にかかった人の95%以上が、予防接種が未接種であるとされています。

MR(麻疹・風疹混合)ワクチン

麻疹の予防接種に使用されるワクチンは、麻疹と風疹の混合ワクチンである「MRワクチン」です。

MRワクチンを接種することによって麻疹ウイルスに対する免疫を獲得できる率は、95%以上といわれています。

1回の接種では免疫が不十分な残る5%の人は、2回目の接種を受けることで免疫を獲得することができます。

■MRワクチン接種時期
1期:生後12~24カ月未満
2期:5~7歳未満で小学校就学前の1年間(4/1~3/31)

日本での麻疹の予防接種は、平成18年度より従来の1回接種から小学校入学前の2回目接種が追加されて、2回接種となりました。世界的には2回接種が一般的です。

平成19年より再び麻疹が流行の兆しをみせたために、平成20年度より2回接種の対象者に中学校1年生と高校3年生を追加しました。

1期の定期接種は生後12~24カ月未満となっていますが、麻疹患者数は1歳代が最も多いことからみても、1歳を迎えたらなるべく早めに接種することが望まれます。

国立感染症研究所では、生後12~15カ月を推奨するとしています。

MRワクチンの接種対象期間を過ぎると自費接種となるため、約1万円程度の接種費用が必要となります。無料で受けられる接種対象期間のうちに、必ず受けるようにしてください。

麻疹はワクチン1回のみの摂取では免疫が十分につかないことがあります。

また、麻疹にかかったことがあると思い込んでいる人でも、ときに麻疹は風疹などの疾患との鑑別が困難なことがあり、実際は麻疹ではなかったということがあるため注意が必要です。

MRワクチンはこれまで麻疹や風疹にかかったことがある人でも接種が可能であるため、確かに免疫をもっているか不安な方はワクチンの接種を検討なさることをお勧めします。

麻疹にかかっている人に接触した後は、72時間以内にワクチンを接種すれば発病を抑えることもできます。

免疫抗体を持っているか定かでない人は、積極的に接種したほうがよいでしょう。

妊婦が麻疹にかかると、流産や早産の危険性が高まります。

妊娠する前であれば、免疫が十分でないことが考えられる場合にワクチンの接種を検討できますが、妊娠中はワクチンを接種することができません。

そのため、できるだけ人混みへの外出は避けるようにするなど注意しなければなりません。

同居者に麻疹にかかる可能性が高い方、例えば麻疹ワクチンを2回接種していない方で、医療従事者、教育関係者など麻疹ウイルスにさらされる可能性が高い方などがいる場合は、かかりつけ医に相談するようにしましょう。

治療中の病気や、使用中の薬などによってはワクチンの接種ができない場合もあります。

予防接種を打ちたくても打てない方など周囲の人を守るためにも、予防接種を受けられる方は積極的に受けるようにしてください。

ワクチンの副反応

注射部位が赤く腫れたり、しこりができることがあります。

その他のMRワクチンの副反応として多いものは発熱です。

接種後1週間前後に最も頻度が高く、2週間以内に発熱を生じる人の割合は約13%といわれています。

その他には、発疹が数%、蕁麻疹(アレルギー反応)が約3%、発熱に伴う痙攣が0.3%です。

注射部位の発赤や硬結以外の副反応は1回目のワクチン接種でみられることがあるもので、2回目の接種でそれらの副反応がでることはほとんどありません。

極めて稀な副反応として、脳炎や脳症が100万~150万人に1人以下の頻度で報告されていますが、ワクチン接種との因果関係が明らかでないものも含まれます。

予防接種の普及によって麻疹や風疹などの感染症患者数は激減しており、ワクチンによる恩恵は計り知れません。

各種ワクチンに対しては世界中で調査、研究が続けられており、その安全性が追及されています。

ワクチンに対する副作用を懸念するあまり、日本は世界の先進国と比較してさまざまな感染症に対するワクチン接種の普及が大きく遅れてしまいました。

ワクチン接種後の健康被害が報告されたケースでは、その健康被害が本当にワクチン接種によるものであるのか、判断は難しいとされています。

しかし因果関係が完全に否定できない限り、国による救済を受けることができます。日本では、定期接種に定められたワクチン接種に対し、健康被害の補償は手厚く定められています。

そのためにも、定期接種は定められた期間内に受けることが大切です。

はしかと似ている病気

風疹(三日はしか)

風疹は風疹ウイルスによる発疹症です。

潜伏期間は14~21日で、その後発熱、発疹、リンパ節腫脹などの症状が現れます。

発熱は風疹にかかった人の約半数にしかみられません。

また、感染しても発症しない不顕性感染が15(~30)%程度にみられます。

感染力は麻疹ほど強くはなく、症状も麻疹ほど重症にはなり難いとされています。

風疹で最も問題となるのが、妊婦への感染です。

妊娠20週頃までの妊娠初期の段階で感染すると、風疹ウイルス感染が胎児に及び、先天性心疾患、難聴、白内障、網膜症などの先天異常を生じます。

また、先天異常以外に新生児期に出現する症状には、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、黄疸、間質性肺炎、髄膜脳炎などが挙げられます。

これらは、先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)と呼ばれます。

最も有効な予防法はワクチンの接種です。

日本での定期接種では、麻疹と風疹のワクチンが混合されたMRワクチンが使用されています。

水痘(水ぼうそう)

水痘(水ぼうそう)は、水痘帯状疱疹ウイルスへの感染で引き起こされる疾患です。

14~16日程度の潜伏期間を経て、虫刺されのような発疹が頭部や腹部に生じ、やがて小さな水泡となっていきます。

翌日には発疹状の水泡が全身に拡がります。

一週間程度で、全ての水泡がかさぶた様になります。

水痘には抗ヘルペスウイルス薬が効きます。初期の段階で服用すると、回復を早めることができます。

最大の予防は、ワクチンの接種です。

突発性発疹

ヒトヘルペスウィルス6型、7型の感染で引き起こされるものです。

感染経路はよくわかっていません。

多くの小児が1歳過ぎまでかかるといわれています。

突然38度以上の発熱を生じますが、咳や鼻汁などの症状はなく、熱のわりに機嫌は悪くないことが多いとされています。発熱は3~4日程度続きます。

解熱後に、全身に発疹が出ます。発疹にかゆみはなく、2日程度できれいに消失し、痕は残りません。

赤ちゃんにとって初めての発熱となることが多く、慌ててしまうかもしれません。

熱が高くても機嫌が悪く母乳やミルクが飲めていれば心配はいりませんが、ぐったりしていたり顔色が悪かったり、水分が摂れない状態にある場合は医療機関を受診しましょう。

まとめ

麻疹には特効薬がなく、対症療法が中心となります。

病期は「カタル期」「発疹期」「回復期」にわけられ、多くの場合は無治療でも一定期間を過ぎれば回復に向かうものですが、重篤な合併症を引き起こすこともあるため警戒すべき感染症です。

先進国の医療水準をもってしても、1000人に1人の割合で死亡するとされています。

麻疹の感染力は非常に強く、また感染すればほぼ確実に発病するといわれています。

抗体免疫は麻疹にかかるか、予防接種によって獲得できます。

ワクチンの普及によって患者数は著しく減少していますが、免疫抗体をもたない、または不十分な大人が感染、発症するケースが増えているため注意が必要です。

麻疹のワクチンの1期は1歳から接種できます。

1歳、1歳未満のワクチン接種前の年代における患者数が最も多いため、定期接種を受けられる時期になったらできるだけ早くワクチンを接種するようにしましょう。

また、もしかすると自分には免疫抗体がないのではないかと思われる場合には、ワクチン接種を受けることが推奨されます。

定期接種以外では自費となりますが、自分がかからないようにすることは勿論、感染を拡大させないためにも、ワクチン接種は大切です。

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