遺伝子操作やデザイナーベビーなど国際問題に。ノーベル医学賞受賞のデビッド・ボルティモア氏の「DNAのはさみ」への見解

Uncategorized
スポンサーリンク

「クリスパー・キャス9(CRISPR-Cas9)」と呼ばれる技術が国際的に注目されている(ノーベル賞が来年でもおかしくはない、「クリスパー・キャス」の進化を参照)。DNAの狙った場所を切り取ったり、入れ替えたりする。「DNAのはさみ」とも呼ばれる新技術だ。中国の研究で国際問題化しているのが、生殖細胞への適用。遺伝病をあらかじめ防いだりできる可能性が注目されている。一方で、人の遺伝子操作につながるとして、けん制する動きが強まっている(クリスパー(CRISPR)技術の利用に警鐘、サイエンス誌を参照)。ノーベル医学賞受賞者で米国カリフォルニア工科大学のデビッド・ボルティモア氏がこのたび警告を発している。

「目標外効果」の心配

ボルティモア氏の見解について、大学が2015年6月に紹介している。そもそもクリスパー・キャス9とは、DNAの好きな場所を切断する技術として注目されたのだが、その後、特定の遺伝子のスイッチをオンオフしたり、入れ替えたりと、さまざまな用途に使えると次々分かってきた。その先に、遺伝病の原因となる遺伝子を取り替えるといった発想も浮上してきた。ボルティモア氏は、問題となる遺伝子を取り替える場合に、意図せずに全く別のDNAにも影響を及ぼす可能性について問題視している。変更が起こっても分からない可能性が高いと見ている。知る手段がほとんどない。なぜかといえば、DNAのほとんどの場所では、表面上は遺伝子と関係がない場所が多いからだ。とはいえ、実は何らかの機能を果たしているような場合も少なくない。知らず知らずのうちに、遺伝子編集で変化が加わったとすると、それが後世に遺伝する可能性が出てくる。一見、遺伝子から作られるタンパク質への変化がないのだけれども、思わぬ重大な異常を起こしかねない。ボルティモア氏は、将来の世代に影響を及ぼすような変化が起こらないという確信を得る必要があると指摘する。「目標外効果(off-target effects)」を避けなければならない。目標外効果を十分に最小化できたたかどうかは重要な安全性の検討条件になるという。

病気とは全く異なる問題

「デザイナーベビー」についても懸念を示す。重大な病気を避けるための遺伝的な修正と、「美容的な理由」「能力の修正」などのための遺伝的な修正の違いについても強調する。遺伝子編集を病気の治療に使う場合は「単純」と説明する。病気の原因になる特定の遺伝子を置き換えるだけなので編集対象が明確だからだ。一方で、見かけの良い子どもにしたい、知的な子どもにしたいといった目的で遺伝子編集が適用されるとすれば、そう単純ではなくなる。美的、知的な特徴と遺伝子との関係が複雑だからだ。例えば、知性が一つの遺伝子だけで決まるわけではない。病気の治療については医療判断から解決すべきである一方で、子どもの知性や美容に至ると文化的な問題が出てくる。ボルティモア氏は、両極端の例と紹介した上で、多くの問題は両者の中間的な位置にあると説明。多かれ少なかれ判断は難しくなると見られる。

技術の委縮は避ける

ボルティモア氏は、最終的には社会が判断するという見方を出しながらも、科学者がガイドラインを出すように求めている。今後10年間、技術の応用をめぐる問題は結論を出すのがますます難しくなると見る。過去の遺伝子操作をめぐる社会的な議論も踏まえて、技術を委縮させないように、安全性を確保させながら進歩させていくのが大切という見方を示す。

文献情報

Urging Caution During a Genomic Revolution: A Conversation with David Baltimore. Caltech News & Events 2015 June 2.

Urging Caution During a Genomic Revolution: A Conversation with David Baltimore | Caltech

コメント