「キーン」と嫌な感覚がする耳鳴りが続き、原因が分からず悩むことはありませんか? 今回は手軽に実践できる、手や足などのツボ刺激をはじめとした耳鳴りの対処法について、JHT日本ホリスティックセラピストアカデミー校長の加藤雅俊さんにお話をお伺いしました。
耳鳴りの原因
「耳鳴り」とは、キーンと不快な音を継続的に感じる状態を指します。ストレスなど精神的な問題から引き起こされることが多いといわれていますが、中耳炎や内耳炎など、耳の病気の可能性もあります。耳鳴りが続く場合は、専門医の診断を受けることが重要です。
疾患による耳鳴り
耳鳴りを症状として引き起こす疾患は「中耳炎」や「内耳炎」、「メニエール病」などが挙げられます。根本原因を治療することで耳鳴りも解消するため、早めに専門医の診察を受けることが重要です。
疾患以外が原因の耳鳴り
特定の疾患だと診断されないのに耳鳴りが続く場合は、ストレスや疾患まで至らない身体の不調などが原因と考えられます。ストレスなどによる精神的な不調や、肩こりや疲労などの身体の不調が続くと、交感神経が常に高ぶり自律神経が乱れた状態が続いてしまいます。そのため、脳の疲労が回復しない、内耳の働きが乱れるなど、複合的な要因によって耳鳴りを引き起こす場合があります。
ツボ押しの効能
ツボは神経が交差点のように集中している場所で、刺激することで自律神経に働きかけると考えられています。自律神経は身体の器官や血管などの制御を担っており、適切な刺激を与えると、各器官を調整して健全な状態へと導きます。
「ストレスや疲労などで神経の働きが鈍くなると、神経の交差点ともいえるツボにおいて、神経の流れが滞ってきます。すると、身体の部分の修復すべき大事な情報が脳に伝わらず、不調からやがて病気へと進行する恐れがあるのです。ツボ押しは、交差点の滞りを解消することで、その情報を脳へ正確に伝えます。それによって脳は当該部分を修復するための指令を出し、身体を健全な状態に導くことができるのです。また、ツボというと東洋の神秘のようにとらわれがちですが、現在WHO(世界保健機関)に認知され、その効果が実証されているツボの数が、全身に361か所もあります」(加藤先生)
基本的なツボの押し方
押す位置を誤ってしまうと、ツボ押しの効果を得ることはできません。それだけではなく、強くグイグイと押すと「揉み返し」といわれる軽度の炎症が起こってしまう可能性もあります。ここでは、基本的なツボ押しの方法を解説します。
ツボの見つけ方
ツボの多くは骨のキワにあります。そのため、まずはツボの付近にある骨を探しましょう。以下で正しいツボの位置の見つけ方を解説します。
1.目印となる骨を探す
例えば、手の甲にある合谷を探す時の目印は、親指と人差し指の骨です。
2.骨をたどり、ツボを見つける
親指と人差し指の骨が接している付け根を探ります。合谷の場合、人差し指側の骨のキワ、ややくぼんだ部分になります。
3.押してみて「ツーンとくる角度」を探す
骨の内側に指を入れ、押し上げるように押します。その角度で押すと力が入らないような、ツーンとくる感覚になる角度を見つけましょう。
ツボ押しの強さ
ツボ押しの適度な強さは「自分が気持ち良いと感じるくらい」です。疲れやだるい時は「押すと気持ち良さを感じるくらい」、痛みやコリのように症状が少し重いと感じたら「イタ気持ちいい」と感じるくらいを目安に行ってください。
ツボを押す回数と押す長さ
一ヵ所につき2〜3回を目安に行ってください。指でゆっくりと5秒かけて押していき、5秒かけてゆっくり戻します。押す時は息を吐き、戻す時は息を吸うとよいでしょう。
耳鳴りの解消・予防に効果的なツボ
特定の疾患がない場合、耳鳴りの主な原因はストレスなど精神的な不調が原因だと考えられます。症状を改善させるには、「耳門(じもん)」をはじめとした、関連のある以下のツボを刺激しましょう。
「ツボ押しには不調の解消のほか、日常的に行うことで予防的な効能もあります。これまでツボを押して『気持ちいい』と感じていた場所が、今日は『痛い』と違った感覚があったら、それは未病(※)のサインといえるでしょう。また、日常的にツボを押すことで、常に神経の通りが良くなるため、自然治癒力を高めることにつながると考えられます」(加藤先生)
※未病とは、病気になる手前のこと。病気には至っていないが、病気につながりやすい不調が起きている状態。
耳門(じもん)
耳の機能を正常化させる効果のあるツボで、耳鳴りの解消に作用します。
耳の穴の前にある出っ張った軟骨のやや上にあるくぼみにツボがあります。押したい方と同じ側の人差し指の腹を使って、垂直に押しながら突き上げる感じで。左右行ってください。
頭の竅陰(きょういん)
耳の後ろ側にあるツボで、頭痛や耳のトラブルなどに効果があります。
耳の後ろにある出っ張った骨である乳様突起(にゅうようとっき)の先端から、後ろの方にあるくぼみにツボがあります。両手で頭を掴むようにして、親指をツボにあて、後ろから前に、骨に指を引っかけるようにして左右同時に押します。
合谷(ごうこく)
リラックス効果のあるツボです。自律神経のバランスを整える作用があります。耳鳴り以外に、上半身に感じる痛みなどの不調にも作用します。
押したいツボと反対の手の親指の腹を使い、骨の内側に指を入れ、押し上げるように押します。左右両方行いましょう。
労宮(ろうきゅう)
自律神経のバランスを整える作用のあるツボです。耳鳴りをはじめ、気分の落ちこみなど精神的な不安に効果があります。
中指の骨を下にたどっていくと当たるくぼみの少し薬指側にあります。ツボと反対側の親指をツボに当て、一度押してから人差し指の付け根方向に突き上げる感じで押してください。左右両方行いましょう。
ツボ押し以外の耳鳴り解消法
耳鳴りの解消には、副交感神経を優位にすることが必要なので、心身ともにリラックスすることが重要です。リラックスするために手軽に取り入れやすい方法は「アロマオイル」の活用です。リラックス効果のあるアロマオイルの香りの種類と、活用法を以下にまとめました。
リラックスしやすくなる香りの種類
樹木系の香りのする「サイプレス」「ローズウッド」「ジュニパーベリー」、フローラル系の香りの「ラベンダー」、柑橘系の「オレンジ」などがおすすめです。
アロマオイルの活用法
「香りを楽しむだけではなく、『肌に直接塗ってアロママッサージする』『お風呂に入れてアロマバスにする』『加湿器などに垂らしてスチームにする』などの方法があります。肌に直接塗る際は、アロマオイルに含まれた高濃度な有効成分によって炎症を起こすことがあるので、必ずキャリアオイル(オリーブオイルなどの植物オイル)で十分に薄めて使用してください」(加藤先生)
めまいに有効なツボ
めまいは、耳鳴りと共通した原因も多いため、「耳鳴りが起こった後にめまいが起こる」「耳鳴りとめまいが同時に起こる」など、症状を併発しやすいといされています。耳鳴りと同様、めまいを緩和させるツボとして、「頭の竅陰(きょういん)」や「合谷(ごうこく)」などが挙げられます。
<参照>
加藤雅俊 著
「ホントによく効くリンパとツボの本」(日本文芸社)※画像協力
「5秒で不調を治す!すごい万能ツボ」(大和書房)
「手のツボを押すだけで しつこい怒りが消える!」(サンマーク出版)
http://www.jht-ac.com/coach_book/