夜中に目が覚め、その後なかなか寝付けない。こうした「中途覚醒」が起こると、目覚めが悪くなるばかりでなく、十分な睡眠時間が確保できないため疲れも抜けません。慢性化すると体調不良や不眠症につながる可能性もあります。今回は、中途覚醒のメカニズムを解説し、質の高い睡眠を手に入れるための対処法を紹介します。

教えてくれた人: フミナーズ睡眠ドクター
眠りの研究を重ねることXX年。多くの眠れないフミナーズたちを救ってきた。
口癖は「睡眠がすべてなのです!」

相談者: フミナーくん
不眠・いびきをはじめ、眠りに関するさまざまな悩みとともに生きてXX年の玄人フミナー。
すっきり起きられないことが多く、毎朝遅刻しかけているのが悩み。
どうして、夜中に目が覚めてしまうのか?

睡眠途中で目が覚めて、そのあと寝付けなくなってしまう症状を『中途覚醒』といいます。フミナーくんは、夜中、中途覚醒してしまうことははないでしょうか?

週1回程度あります。睡眠途中で目が覚めてしまうと、身体の疲れが抜けない感じがするんですよ

特定の疾患がないにも関わらず、中途覚醒が週3回、3カ月以上続くと『不眠症』の可能性 もありますが、フミナーくんはそこまでではないようですね

安心しました。とはいえ、どうして中途覚醒が起こるんでしょうか?

中途覚醒の主な原因は、以下の3つが考えられます
中途覚醒の主な原因
- 睡眠サイクルの乱れ
- 自律神経の乱れ
- 生活習慣の乱れ

中途覚醒の起こりやすいタイミングはあるんでしょうか?

眠りには、脳を休めるノンレム睡眠と身体を休めるレム睡眠があります。入眠後、ノンレム睡眠があらわれてからレム睡眠へと移ります。この、最初のレム睡眠が現れるまでの時間はおよそ90分です。その後、ノンレム睡眠とレム睡眠を70~110分ほどの周期で、一晩のうちに3〜5回繰り返しています。 中途覚醒は、レム睡眠のタイミングで起こる傾向があります

原因のひとつ目『睡眠サイクルの乱れ』というのは、そのレム睡眠とノンレム睡眠の周期が乱れることでしょうか?

そうです。特に高齢者は、このサイクルが不安定になり 中途覚醒を起こしやすくなります。ほかには、交代勤務で昼夜逆転してしまう人も中途覚醒を起こしやすいです。これは、明暗リズムと就寝・起床のサイクルにズレ が生じてしまうのが原因と考えられます

明暗リズムってなんでしょうか?

『太陽が昇り明るくなり、太陽が沈み暗くなる』ことですよ。この明暗リズムと人間が目覚めて活動する、眠くなるというリズムは深く結びついているのです

僕は高齢でもないし、日中の仕事なので明暗リズムも狂っていないと思うんですが……

それでは、原因のふたつ目『自律神経の乱れ』が考えられますね

自律神経は、交感神経と副交感神経で構成される、器官の働きを調整している神経。活発に活動しているときには交感神経が、リラックスしているときには副交感神経が働いている、でしたよね

その通りです。ストレスが溜まっていたり緊張していたりすると交感神経が刺激され、脳や身体が興奮して眠りが浅くなり、中途覚醒を起こしてしまうことがあるのです

そういえば、仕事が立て込んで気持ちがピリピリしている期間、中途覚醒が起きやすい気がします

寝る直前まで仕事のことを考えていたら、頭は覚醒しっぱなしで質の高い眠りは期待できないでしょう。そのため、中途覚醒は、真面目な人、責任感が強い人に起こりやすい傾向があるともいわれるのです

はいはい! 僕です!

……

中途覚醒の原因、最後は『生活習慣の乱れ』ですね

アルコールの過剰摂取や就寝前の飲食、不規則な睡眠時間など、生活習慣が乱れている人も中途覚醒を起こしやすくなるのです

確かに。夜にお酒を飲み過ぎると、トイレが近くなって起きてしまうことがあります

アルコールには利尿作用があるので、お酒の飲み過ぎも改めたい生活習慣のひとつです。よく、寝るために飲酒をする人がいますが、たくさんお酒を飲んで眠ってしまうのは麻酔で眠っているのと似たような状態で 、理想的な睡眠とは別モノです。それに、大量のアルコールを飲んで寝落ちしたあと、数時間で目が覚めてしまうことはないでしょうか?

あります。あります

アルコールは肝臓で分解され、『アセルアルデヒド』という物質になります。このアセルアルデヒドは二日酔いの原因でもあり、交感神経を刺激する作用もあるのです

交感神経が刺激されるということは……

覚醒し、目が覚めてしまうということですね。お酒を飲むなら、男性はビール中びん1本(500ml)、日本酒1合(180ml)くらいを目安とし(女性は男性よりも肝機能の働きが低いため、これよりも少なめ)、入眠の3時間前までに切り上げるよう心がけてください
朝までぐっする眠るために

フミナーズ睡眠ドクター、中途覚醒せず朝まで眠るためにはどうしたらいいんでしょうか?

睡眠の質を高めることが重要です。そのためには、生活習慣を見直してみましょう
質の高い睡眠をとるための生活習慣
入浴の習慣
就寝1~2時間前までに38℃~40℃のぬるめのお風呂に入る習慣をつけましょう。
入浴によるリラックス効果で副交感神経が優位になり、睡眠の質が上がります。また、自然な眠気は、身体内部の体温である「深部体温」が下がっていく時に訪れます。そのため、就寝のタイミングにむけて深部体温をいったん上げることができる入浴は有効です。
寝る前にストレッチをする
ストレッチによってリラックスすることで、副交感神経が優位になり質の高い睡眠につながります。また、ストレッチで体をいったんあたため、就寝のタイミングで体温を下げることができるとスムーズな入眠が期待できます。就寝の1時間くらい前にストレッチをするとよいでしょう。
カフェインを控える
コーヒーや紅茶に含まれるカフェインは、摂取後、約30分から1時間で脳に到達します。すると、カフェインの覚醒作用によって中途覚醒を起こしてしまうことがあるため、就寝前のカフェインは控えてください。
朝、太陽の光を浴びる
太陽の光を浴びると、質の高い睡眠には不可欠な睡眠を促すホルモン「メラトニン」の材料となるセロトニンの分泌が活性化します。また、朝起きて光をしっかりと浴びることで体内時計が整い、夜に自然と眠くなるサイクルが生まれます。
食事を規則的に摂る
朝昼晩の食事時間を毎日同じにすることで体内時計が安定します。特に朝食は、脳が「活動時間だ」と認識して、体内時計のズレが整いやすくなります。起床後1時間以内に食べるのが理想です。
適度な運動習慣を持つ
ほどよい疲労感は眠りを促します。また、適度な運動は、新陳代謝を高め血行が良くなるため自律神経を整える効果もあります。毎日30分程度のウォーキングやサイクリングなどがおすすめです。
夜中のトイレを減らす
水分はなるべく午前中に多めにとるようにして、就寝前は水分摂取を控え目にしてください。アルコールの摂取は、男性ならビール中びん1本(500ml)、日本酒1合(180ml)くらいを目安とし(女性は男性よりも肝機能の働きが低いため、これよりも少なめ)、就寝3時間前までに切り上げることを心がけます。さらに、寝る前には必ずトイレに行きましょう。

質の高い睡眠には、寝室の環境も関係あるんでしょうか?

もちろんです。適度に静かな環境で、照明は睡眠前から暗めに落とし、以下のことにも注意してリラックスできる環境に身を置きましょう
質の高い睡眠をとるための睡眠環境
スマホは枕元に置かない
寝る前のスマホは控えてください。画面から出るブルーライトは、睡眠を促すホルモン「メラトニン」の生成を抑制してしまいます。また、ニュースやSNSなどをみていると、脳が興奮して交感神経が優位になってしまうこともあります。
寝室の温度と湿度に注意する
室温温度は、夏は26℃前後、冬は18~23℃前後。湿度は50~60% が理想です。
中途覚醒で考えられる疾患

フミナーくん、ここまで紹介した方法を実践すれば、睡眠の質が上がっていくでしょう。もし、いろいろ試してもまったく中途覚醒が改善されない状態が1カ月以上続くときは、専門医に相談してください

それは、不眠症の可能性があるってことでしょうか

もちろんそれもありますが、別の病気が原因で中途覚醒が起きているという可能性もあるからです
中途覚醒を起こす疾患
中途覚醒を起こす疾患については、以下のようなものが考えられます。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に気道が閉塞する疾患です。呼吸が制限されるため脳に酸素がいきわたらなくなり、その結果、眠りが浅くなって中途覚醒が起きます。
慢性閉塞性肺疾患
「慢性気管支炎」や「肺気腫」などの呼吸器系の疾患の総称です。肺が炎症 を起こし、呼吸がしづらくなるため、睡眠中に呼吸の異常を感じて目が覚めてしまいます。
皮膚疾患
アトピー性皮膚炎などに代表される皮膚疾患による「かゆみ」が気になって眠りが浅くなるほか、掻くと覚醒してしまいます。
むずむず脚症候群
ムズムズと虫が這うような感覚などがあり、脚を動かさずにいられない状態になる疾患です。なかなか寝付けなかったり、不快感で中途覚醒したりしてしまいます。
周期性四肢運動障害(しゅうきせいししうんどうしょうがい)
脚がぴくぴくしたり、膝が蹴り上がったりする症状が1時間あたり15回以上起こり中途覚醒の原因となります。自覚がないことが多いです。
うつ病
気分が落ち込み気力がなくなり、不眠や食欲不振、身体のだるさなどの特定の症状が、2週間以上にわたりほぼ毎日続きます。うつ病と睡眠障害の関連性はとても高いといわれています。

中途覚醒には疾患の可能性もあるんですね、色々勉強になりました。僕は、中途覚醒を起こさないためにも、まずは生活習慣を見直してみます

それがいいでしょう。健康な生活のためには睡眠がすべてなのです!
<参考>
フミナーズ
坪田聡「快眠★目覚めスッキリの習慣」(中経の文庫)